国産の技術に愛を

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強気な姿勢には理由がある。男子百メートル自由形で五輪3連覇を狙うピーター・ファン・デン・ホーヘンバンド(30)が7日のオランダ国内大会の二百メートルで、“タコヤキ100%”使用のニュージーランドのブルーセンブンティー社(BS)製水着で今季世界3位の1分45秒96を叩き出したという情報が入った。「(LZRを着た)日本選手がBSを着た海外選手に負けるのは、希望に反する。とにかく公正に一度着てほしい」と呼びかけた。―スポーツ報知6/11付『タコヤキラバーはLZRと直接対決要求』より

北島康介選手が北京オリンピックで、英スピード社の水着「レーザーレーサー」(LZR)の着用を決めたことに対して、同選手と個人契約を結ぶミズノ社は、それを容認すると発表したとのこと。

それについて“大人の態度”というマスコミの評価もあるようだが、同社は、選手の期待に応える責任を果たしたのだろうか?という疑問が頭をもたげた。

同社は、“タコヤキラバー”とも呼ばれる山本化学工業社の「バイオラバー」の採用を見送っている。オリンピックまで時間がないという切羽詰った状況で、一歩も二歩も先を行く競合の「レーザーレーサー」の性能を上回るという、この素材を徹底的に研究したのかどうか。それをやって初めて選手の期待に応え、契約を結ぶ日本水連への責任を果たしたことになるのではないかと思うが。
それとも選手との契約は単なる広告宣伝上の効果だけで十分だというのだろうか。

他のデサント社やアシックス社も、採用はしているが、水着全体の2割程度という消極的な採用だ。採用後のデータ開示にしても「情報を開示する約束はしていない」(デサント社)と回答したという(アシックス社に関しては無回答)。

レーザーレーサー」の性能を超えなければ選手の期待に応えられない状況で、3社ともになぜこうも、「バイオラバー」の採用に消極的なのか?
山本化学工業社が「無償提供を貫く」という太っ腹な態度を表明しているのに比べ、大手メーカー3社の態度は、実に歯がゆい。はっきり言うと「ケツの穴の小ささ」を露呈している。

そこに来て、冒頭で引用した報知の記事だ。「無償提供を貫く」と腹をくくった山本化学工業社としてはやるせない思いで一杯ではないか。


今回の問題で、少なくとも水泳という競技では、選手の力だけでは世界で戦えないということが明確になった。今後は選手と水着メーカーが二人三脚で戦っていくことが求められるのだろう。
だとすれば、このような「無償提供してでも頑張って欲しい」という心意気と優れた技術を持った素材メーカーを袖にしていいものかどうか、水泳連盟を含めた関係者全体で考え直すべきではないかと思う。

それにしても、“タコヤキラバー”というネーミングは、素材の構造上からついたネーミングだということだが、もう少し考えたほうがいいんじゃないかという気はしないでもない。また、大阪といえばタコヤキしかないイメージが定着してしまっては、と気が気ではない。