「それでもボクはやってない」

家族でよく行くショッピングセンターの中に入っているシネマコンプレックスでは、平日の朝第1回目と最終の上映分は、料金が1200円と割安で観劇できるというので、今日は仕事に出かける前に話題の映画『それでもボクはやってない』を見に行った。安いとは言っても平日の朝では、ショッピングセンター内を歩く人自体が少なく、劇場内も人影はまばら、10人前後ぐらいの観客だった。水曜日はレディースデーで、女性は終日1000円で観劇できるらしく、水曜日はいつも満員だというので、そちらに集中しているのだろう。

さて、実はこの作品、朝出かける前に見ていたテレビ番組で偶然取り上げられていて、出演者のオスギさんが、「感情的にならずに冷静に見て欲しい映画」だと言っていた。だが、スクリーンの中での出来事は、観客である僕を何度も失望させ、冷静さを忘れさせた。どうもこの国では無実の罪で裁かれている人が多いらしい、ということは話では聞いていた。痴漢の誤認逮捕についても、無実なのに犯人扱いされて悲惨な目にあっている人がいるということも知っていたが、ここまでとは…。警察も、検察も、裁判官も、断固無実を主張する被疑者に対して、まるで無実の人が無実であってはいけないかのように立ちはだかる。
こういう司法制度のもとでは普通に生きていたって、いつ犯罪者にでっち上げられてもおかしくはない。

朝の番組の中で周防監督自身が、「ウソのない」ことにこだわったと言っていたとおり、誇張された演技、劇的な音楽、大げさな効果音というものが一切なく、監督が4年にわたって調べあげたことが、そのままストレートに表現されていたのだろうと思う。とっても静かだけれども、衝撃は大きな作品だった。
劇中、「痴漢冤罪事件には日本の刑事裁判の問題点がはっきりとあらわれる」と語られているが、誰もが自分のこととして捕らえるためにも、「痴漢事件」というのは格好の題材だったろうと思う。